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レッスン・プラス・ワン225号

2026年11月6日

【第1回】

発表会は「挑戦の場」?それとも「達成の場」?

〜発表会の曲選びを考える① 自己効力感という視点〜

こんにちは、まるみえ先生こと中西美江です。

レッスン・プラス・ワン(LPO)で連載中の「聞いて!まるみえ先生」で、

今回は「発表会の曲選び」についてのご相談にお答えしました。

誌面では書ききれなかったことも含めて、

このブログで3回に分けてもう少し掘り下げてみたいと思います。

 

いただいたお悩みは、こんな内容でした。

少し挑戦できる曲を選びたい一方で、練習してくれないと本番までに仕上がらない可能性もある。まるみえ先生は発表会の曲選び、どのようにされていますか?

多くの先生が毎年ぶつかる悩みではないでしょうか。

 

まずは先生にとって「発表会の場」とはどういう場でしょうか?

 

選曲の前に、「発表会とは何か」を決める

 

選曲で迷うときは、「どの曲にするか」より

先に「発表会を何のための場にするのか」が決まっていないことが多いように思います。

  • 生徒さんの成長を見せる場
  • 新しいことに挑戦する場
  • 教室の指導力を示す場

どれも間違いではありません。

でも、目的があいまいなままだと、選曲の基準も毎回揺れてしまいます。

 

私は、発表会を「生徒さんが達成感を味わう場所」と位置づけています。

 

挑戦は、日々のレッスンで十分にできます。

毎週のレッスンで「できた!」を積み重ね、

その成果を発表会で「やっぱりできた!」と確かめる。

発表会は背伸びの度合いを試す場ではなく、積み重ねてきた力を

安心して発揮できる場であってほしい。これが私の選曲の出発点です。

 

自己効力感 ── 「自分にもできる」という感覚

 

心理学者アルバート・バンデューラは、

「自分ならこの課題をやり遂げられる」という感覚を

自己効力感(Self-efficacy)と呼びました。

自己効力感の高い子は、新しい課題にも前向きに取り組み、

失敗しても粘り強く続けられるといわれています。

バンデューラは、自己効力感を育てるものとして4つを挙げています。

発表会に当てはめてみると、とても興味深いことがわかります。

 

自己効力感の源発表会では…
① 達成体験:自分でやり遂げた経験       本番で最後まで弾き切れた
② 代理体験:身近な人の成功を見る仲間やお兄さん・お姉さんの演奏を聴く
③ 言語的説得:「できるよ」と励まされる先生や家族からの言葉
④ 生理的・情動的状態:心身の落ち着き安心して舞台に立てる

 

この中で最も強い影響を持つのが

①の達成体験です。ここに、選曲の答えのひとつがあります。

難しすぎる曲で本番を迎え、途中で止まってしまった。

そんな経験は自己効力感を育てるどころか、

「やっぱり自分にはできない」という感覚を残してしまうことがあります。

少し頑張れば届く」曲を確実に弾き切る経験こそ、

子どもに「自分にもできる」という自信をつける事ができるように思います。

 

「誰のための練習か」が変わってしまうとき

 

難しすぎる曲には、もうひとつ見落としがちな落とし穴があります。

仕上がらない不安が大きくなると、子どもの練習の目的は次第にこう変わっていきます。

  • 「失敗するのがいやだから練習する」
  • 「間違えたら恥ずかしいから練習する」
  • 「先生やお母さんに怒られないように練習する」

教育心理学の達成目標理論では、

「上手になりたい、できるようになりたい」という習得目標と、

「よく見られたい、失敗したくない」という遂行目標を区別します。


前者を持つ子は困難に粘り強く向き合えますが、

後者が強くなると失敗を避けることが目的になり、

挑戦そのものを避けるようになりやすいといわれています。

 

練習の目的が「他者からの評価」にすり替わると、たとえ本番で弾けても、

「自分自身の目標を達成した」という実感が残りにくいのです。

 

だからこそ私は、本番の結果だけでなく、終演後に「ひとつ上のステップに進めたね」と、

その子の成長を言葉にして伝えることを大切にしています。

これは自己効力感の③「言語的説得」にあたります。

 

次回予告

 

では、「少し頑張れば届く」曲とは具体的にどう見極めればいいのでしょうか?


次回は、私が選曲で大切にしている「4つの視点」を、

自己決定理論や「発達の最近接領域」という考え方とあわせてご紹介します。

 

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