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ポリヴェーガル理論に基づく理想的なレッスンとは

2026年9月6日

今日は私が今まで勉強してきたレッスンにまつわる様々なことを

「なぜこのレッスンがうまくいくのか」を言語化するために学んできた理論に

ついてお話しします。

最初にお話しするのは

「ポリヴェーガル理論」とは?

ポリヴェーガル理論とは、アメリカの神経生理学者スティーブン・ポージェス博士が提唱した、

自律神経系の働きに関する理論です。

人間の自律神経系は、大きく分けて

「腹側迷走神経系」

「交感神経系」

「背側迷走神経系」という3つの状態を行き来していると

考えられています。

  • 腹側迷走神経系が優位なとき、

人は安心・安全を感じ、他者とつながり、落ち着いて学ぶことができます。

  • 交感神経系が優位になとき、

緊張や興奮が高まり、「闘うか逃げるか」という防衛的な反応が起きやすくなります。

  • 背側迷走神経系が優位になとき、

心身がシャットダウンし、無気力や思考停止のような状態に陥ります。

この理論の大事なところは、3つの状態は

本人の「意志」や「やる気」でコントロールできるものではなく、

神経系が無意識のうちに周囲の状況を察知して自動的に切り替わる、

ということです。

だからこそ、「頑張って集中しなさい」

「緊張しないで」という声かけだけでは、

実はほとんど効果がないのです。

レッスンで実際に見られるサイン

【具体的なレッスン事例】

 

交感神経系が優位になっているサイン

少し難しいフレーズにさしかかると、指の動きが急に速く雑になる時ってありますよね?

間違えることを恐れるあまり、「早く通過してしまいたい」という気持ちが先に立ち、

結果としてミスが増える。

これはまさに、交感神経系が優位になり、心拍が上がり、呼吸が浅くなっている状態です。

焦りが焦りを呼ぶ悪循環に入っています。

 

背側迷走神経系が優位になっているサイン

間違えた瞬間に表情が固まり、手が鍵盤の上でぴたりと止まってしまいます。

「もう一回弾いてみようか」と声をかけても、反応が数秒遅れる。

声のトーンも小さくなり、「わからない」という言葉すら出てこなくなります。

これは、防衛のために心身がシャットダウンしている状態――いわば凍りついている状態です。

 

どちらの状態も、傍から見ると

「集中していない」「やる気がない」ように見えてしまいがちです。

しかし実際には、生徒さんの脳と神経系は、その瞬間、「身を守ること」にすべてのエネルギーを使っています。

どれだけ丁寧に技術指導をしても、この状態では新しい情報は入っていきません。

 

【レッスンの最初の数分に、なぜこだわるのか】

 

私は、レッスンの最初の数分を、生徒の神経系が腹側迷走神経系優位――

つまり安心できる状態になることを意識的に行なっています。

 

具体的にはこうです。

  • 教室に入ってきた瞬間の表情や声のトーンを観察する

(元気があるか、疲れているか、何か気になることを抱えていそうか)

  • こちらから先に、柔らかい声のトーンと笑顔で「今日はどうだった?」と何気ない会話を始める
  • その日の様子によって、いきなり鍵盤に向かわせず、

少し雑談やストレッチから入るなど、順番を柔軟に変える

  • 「今日はここまでできればOK」という着地点を、レッスンの最初に共有しておく

これらは特別なテクニックというより、

「今日はここは安全な場所だ」ということを、

言葉ではなく雰囲気そのもので生徒の神経系に伝える作業です。

 

事例:焦りが強い生徒さんへの関わり方

 

発表会が近づくと、普段できているところまで急に弾けなくなることがありました。

よくよく観察していると、これは技術的な問題ではなく、

「間違えたら先生や親をがっかりさせてしまう」「練習が足らないのではないか?」という

不安が高まり、交感神経系が優位になっていいるのではないか?と感じました。

 

そんな時、まずレッスンの冒頭で「今日は間違えても大丈夫、いっぱい間違えて間違いを掃き出してしまおう!」と伝えました。

そして実際に、私自身がわざと簡単な部分を間違えてみせ、

「あ、間違えた。でも大丈夫でしょう?」「今の間違いに気がついた?あんまりわからないでしょう?と言いました。

これは「間違い=恐いもの」という思い込みを、崩すための工夫です。

 

数回のレッスンを重ねる中で、生徒さんの表情も和らぎ、自ら「間違えてみたり」と

「間違っても大丈夫だと感じられるようになったと思いました。

そして間違えても手が止まらずに弾き続けられるようになりました。

技術が急に上がったわけではないと思いませんか?

神経系が「ここは安全だ」と学習したことで、本来持っていた力を発揮できる状態に

戻っただけだと考えています。

 

事例:凍りついてしまう生徒への関わり方

 

レッスン中に何か指摘を受けると、表情が固まり、しばらく何も反応できなくなってしまう生徒さんがいました。

この状態のときに「どうしたの?」「大丈夫?」と矢継ぎ早に問いかけることは、

実は逆効果になりがちです。凍りついている神経系にとって、

問いかけそのものがさらなる負荷になることがあるからです。

 

私が意識したのは、まず自分自身が声のトーンを落とし、急かさず、

まずは座って待つことでした。

そして少し落ち着いたら「今日はいつもより座る位置が前だったじゃない?」など

評価ではなく客観的な感想を伝えます。

そうすることで間違いは「大したことではなく」、

「一緒に今の状態を分析する」ための言葉掛けをしました。

 

この生徒さんの変化は、ちょっと時間がかかりました。

でも間違えた瞬間に固まる時間が明らかに短くなり、「今はこの状態だったから間違えたんだな」

や間違いをきちんと受け止めることが出来るようになってきました。

 

電子ピアノが「安心づくり」に果たす役割

 

電子ピアノは、この「安心づくり」の時間においても、独自の強みを発揮してくれます。

  • 音量を気にせず自由に音を出せるため、

「間違えた音を大きく響かせてしまったらどうしよう」という不安がそもそも生まれにくい

  • ヘッドホンを使えば、周囲の目や耳を気にせず、自分だけの音の世界に没頭できる

お母さんに聞かれたくないや「自分で好きな音を出して遊びたい」などの欲求も満たしてくれます

  • 録音機能を使い、「練習した時に録音してごらん?その時どう思ったか聞かせて?」

「聴いてみてどう感じた?」と客観的に振り返ることができる

 

家族の前で弾くことや練習を聴かれることを極端に嫌い、強い緊張を感じるタイプの

生徒さんがいらっしゃいました。

ご家庭で電子ピアノにヘッドホンをつなぎ、自分一人だけの世界で練習をする事をオススメしました。そうすると「誰かに聴かれているかもしれない」という緊張・心配がなくなり

レッスンでもスムーズに弾けるようになっていきました。

 

電子ピアノだから出来る機能が、腹側迷走神経系を優位に保つ助けになった、

わかりやすい例だと思います。

 

生徒さんにとっての理想のレッスンとは・・・

 

理想のレッスンとは、生徒さんにとっての理想を指すのだと考えています。

テクニックを教える前に、まず「ここは安全な場所だ」と生徒さんに伝えることから

始まるのだと考えています。安心という土台があってはじめて、

子どもは新しいことに挑戦し、間違いから学び、自分の力で成長していくことができます。

 

 

程度の差こそあれ、すべての生徒さん(子供も大人も)に、

こうした神経系の動きは存在しています。

「なぜか今日は集中できていないな」と感じたとき、

それを本人の意欲の問題として片づけるのではなく、

「今、この子はどういう状態にあるだろうか」と考えてみる。

 

この視点の転換こそが、34年間の指導の中で私が一番大切にしてきたことです。

「教室の玄関を開けたらシリーズ」

教室の玄関を季節の感じる飾り付けをするのも「ポリヴェーガル理論」に基づく

「安心」である場所を思いっきりアピールする目的があります。

そして私自身のウェルビーイングにもつながっているんです。

今月はどんな飾り付けにしようかな〜〜って考えること

生徒さん一人ひとりのびっくりした顔が私の栄養なのです。

「ポリヴェーガル理論」「SEL教育」そして「ウェルビーイング」

この3つはこれからを生きる人間の必要な思考要素であることは間違いありません。

もう行き着くとこまで行った感のある現在、生きるべき場所を他の星に求めていく今、

「今までの価値観」はあまり役に立たなくなってきました。

ぽこあぽこピアノ教室では

自分の想像する未来は自分で創造するそんな人に、育って行ってほしいと思っています。