【生徒別マッチングとSEL(社会情動学習)】
「生徒さんが教材に合うか」ではなく
「生徒さんの状態が設計思想に合っているか」
前回は教材にはそれぞれ「設計思想」があり、生徒さんが詰まってしまう背景には、
ポリヴェーガル理論で説明されるような神経系の状態も関わっているという事を書きました。
今回は「設計思想」を軸にしながら、生徒側の視点から考えて行きたいと思います。
私がいつも考えているのは
「生徒さんが教材に合うか」ではなく 「生徒さんの状態が設計思想に合っているか?」
どういう事?と思われるかも知れませんが、まったく同じことを違う角度から言っています。
教材を「絶対的な正解」として見るのではなく、生徒さんの今の状態というレンズを通して、どういう視点からレッスンすれば良いかを一番に考えます。私はこの柔軟さを、指導の中でいちばん大切にしています。もちろんテキストは「方向性や順番」などをまとめている、レッスンには欠かせないものかも知れません。ピアノを習得する生徒さん向けに構築されたものであることは重々承知しています。でも私の目の前にいる生徒さんの為に作られたものではありません。
生活スタイル・性格など全てを把握して一番最適なものを示せるのは「テキスト」ではなく
やはり目の前のピアノの先生です。
その先生が、一人ひとりの生徒さんに向き合い、この生徒さんにはこの順番でレッスンしよう
この生徒さんには、このアプローチを加えてからレッスンをしようなど
今この時の最適解を提案することが大事なのでは?と思います。
そして講座では、この視点を実践しやすくするために「6つの生徒タイプ」をご紹介しています。一人の生徒が複数のタイプを併せ持つことも多いので、組み合わせを柔軟に見極めていただきたいと思っています。その前に・・・
生徒タイプの中身をご紹介する前に、この見極めを支えている
もうひとつの理論的な柱、
SEL(Social Emotional Learning/社会情動学習)に
ついてお話しさせてください。
SELとは、子どもたちが自分自身や他者の感情を理解し、それをコントロールしながら、より良い人間関係を築き、責任ある意思決定をしていく力を育てる教育アプローチです。
アメリカの教育研究団体CASEL(Collaborative for Academic, Social, and Emotional Learning)などが体系化してきたもので、
一般的に次の5つの力から構成されるとされています。
自己理解(Self-Awareness):自分の感情や考え、強み・弱みに気づく力
自己管理(Self-Management):感情や衝動をコントロールし、目標に向けて行動する力
社会的認識(Social Awareness):他者の視点に立ち、共感する力
人間関係スキル(Relationship Skills):健全な関係を築き、協力し合う力
責任ある意思決定(Responsible Decision-Making):状況を踏まえて、建設的な選択をする力
学校教育で取り入れられているSEL教育ですが、私は1対1のピアノレッスンという場にも、これらの力を土台にして指導を組み立てる場面がたくさんあると感じています。
私自身が生徒の感情や状態を丁寧に観察し、それに応じて関わり方を調整すること自体が、
SELの視点を実践していることになる。そう思いながら、日々レッスンをしています。
私が講座でご紹介している生徒タイプ
感性・表現重視型(絵本・歌・お話が大好き)
理論・達成感重視型(「なぜ?」が多い・目標好き)
知っている曲で動機型(「弾きたい!」が口グセ)
マイペース・じっくり型(繰り返し・安心感が必要)
テンポよく進みたい型(「もう次!」先取りが好き)
それぞれの詳しい説明は講座の中でご説明しております。
一つだけ言わせてください。「生徒さんをラベリングする」ためのものでは決してありません。
生徒タイプという言葉を聞くと、「この子はこのタイプだから」という固定的な枠にはめてしまうことではないのです。
一人の生徒さんが複数のタイプを併せ持つことも多いにあります。
そして今、この瞬間はこのタイプになっている。なんてこともあるのです。
「今、この瞬間感性・表現重視型の傾向を持つ子が、理論・達成感重視型の要素も同時に持っていることは、よくあるし、あって良いんです。
「生徒さんの今の状態を、決めつけずに丁寧に見る」という姿勢こそが
SELが大切にしている社会的認識(他者の視点に立ち、共感する力)を
私自身(ピアノ講師)が体現することだと考えています。
生徒さん方が「なぜ弾きたがらないのか」
「なぜ今日は集中できないのか」を、
性格や努力不足として片づけるのではなく、
その子の状態と、目の前の教材や課題との関係性の中で捉え直す。
それは、生徒自身の自己理解や自己肯定感を育てることにも、
つながっていくと、今までの経験から得た実感です。
次回予告
さて、生徒のタイプが見えてきたら、いよいよ実践です。
「この子には、この教材の、この部分が合わないみたい」と気づいたとき、
先生には何ができるのでしょうか。
次回は、
私の指導の真骨頂ともいえる「事前準備」「教材魔改造」「迂回教材」という3つのアプローチと、「変える/継続/併用」を迷わず判断するためのフレームワーク、
そしてこれらすべてを貫く「ウェルビーイング」という視点をご紹介します。
【開催】
- 日時:2026年9月28日(月)10:30〜12:00(受付10:00〜)
- 会場:平瀬楽器 藤原台センター
- 参加費:コミュニケーションカード会員 2,500円/一般 3,000円
- お問い合わせ・お申し込み:平瀬楽器 藤原台センター(Tel:078-981-3510)
- 参考テキスト:全音「バーナムピアノテクニック 導入編」、全音「アルフレッドピアノ」、学研「ぴあのどりーむ」、ヤマハ「オルガンピアノの本」、デプロ「目から耳から感性を育てる ひくのだいすき1・2」、デプロ「こどものバイエル」、デプロ「しってる曲からはじめる 楽しいピアノ・レッスン1・2」、音友「アキピアノ教本」、サーベル「ぐんぐん伸びる ピアノ教本1・2」、サーベル「はじめてのピアノ教本1・2」