
ピアノの先生の多くは今でも
「本物の音を知らなければプロにはなれない」
「電子ピアノでは正しいタッチが身につかない」
「電子ピアノは所詮ピアノではない」という考え方が根強くあります。
もちろん、アコースティックピアノにしか出せない響きが当然あります。
鍵盤から伝わる繊細な感覚があります。自分自身の音を作り出す魅力には
底知れない「音楽の奥深さ」があります。
私自身もその魅力をよく知っています。練習すればするほどアコースティックピアノへの
敬意や憧れは増すばかりです。
でも、私は「アコースティックは本物、それ以外は違う」というl考え方には
強い危機感を持っています。
少子化と習い事の多様化という、避けて通れない現実があります。
今、日本は少子化が進み、子どもの数そのものが減り続けています。
それに加えて、習い事の選択肢はかつてないほど多様化しました。
スポーツ系の習い事、プログラミング教室、英語教室、ダンス、eスポーツその他諸々
子どもたちの時間と保護者の予算は限られている中で、
ピアノや音楽は、数ある選択肢の一つに過ぎなくなっています。
以前は「女の子はピアノを習う」なんていうジェンダーを無視した思い込みがありましたが
今はそういうこともありません。もはや「ピアノは習って当たり前」ではなくなりました。
ピアノを習う子どもの数そのものが、構造的に減っていく時代に、私たちは生きています。
この現実を前にして、もし私たちが
「アコースティックピアノでなければ教えない」
「電子ピアノは劣った代用品だ」という狭い考え方に閉じこもってしまったら、どうなるでしょうか。
多くのご家庭にとって、住宅事情や予算、集合住宅での音の問題などから、
電子ピアノは極めて現実的で合理的な選択です。
最初に言った「ピアノの魅力」はある意味「その地点に到達した人の想いであり」
その結果至ったという到達点の境地ではないか?と思うのです。
「ピアノを習いたいな」「楽しみたいな」というピアノを始めたばかりの方々に
その境地に至った到達点から色々言うのはどうかな?と私は思ってしまいます。
「そこに至るまでの道のりを一緒にもう一度辿ってみる」そんな心もちで
レッスンをスタートしたばかりの生徒さんたちを誘うのが私たちピアノ講師だと思うのです。
せっかくピアノを始めたい!と思って下さった方々に
用意した楽器は「本物ではない」と否定してしまえば、
講師自らが、音楽で様々なものを得られたはずの子どもたちを門前払いしていることになります。
「演奏者を育てる」だけでは、音楽は続いていかない・・・
これは私のずっと昔から考えている想いです。「演奏者」に一番必要なのは「聴衆者」です。
すごいピアニストでもお客さんが入らなければ・・・仕事としての成功にはなりません。
チケット売るのも家族と友達だけでは・・・しんどいだけです。
私は大人になってもいつまでも音楽を愛し、
音楽に耳を傾け、興味を持ち、コンサートに足を運ぶ人を育てたいな・・・と考えています。
「音楽を愛する聴衆」を育てることもまた、ピアノ講師とピアノ教室の大切な使命だと考えています。音楽人口の裾野を広げて、πを大きくしていきたい!のです。
電子ピアノだからこそできるレッスンは、技術の完成度だけを追い求めるのではなく、
「音を感じること」「表現すること」「誰かと分かち合うこと」
音楽そのものの喜びを伝えるレッスンは、楽器の種類を問わず実現できますし、
むしろ電子ピアノの自由度がその手助けをしてくれる場面が多くあります。
現場から離れていく講師にならないために
「ピアノ」という楽器のカテゴリーにとらわれず、「音楽」そのものの魅力を伝える。
これからの時代、ピアノ講師が発信する内容は「技術の習得」や「どれだけ進むのか?」
ではなく目には見えない非認知能力を高める為の音楽総合レッスンだと
私は考えています。