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レッスン・プラス・ワン217号

進みの遅い生徒さん

2025年7月3日

 

【聞いて!まるみえ先生】

レッスン・プラス・ワン217号
今回のお悩みは?「毎回同じところでつまずく生徒さんには、“スモールステップ”でレッスン」を行いましょう!

こんにちは、ぽこあぽこピアノ教室 主宰の中西美江(まるみえ先生)です。

◆今回のお悩み

集中力が続かず、こちらの言うことをなかなか聞いてくれない生徒さんがいます。
その結果、毎回同じところでつまずき、テキストも進まず悩んでいます。(H.T先生)
年齢や性格によって対応は様々ですが、
“あるポイント”に気づくと、レッスンは少しずつ前に進み出します。

◆「同じところでつまずく」のは、理解が止まっているサイン

生徒さんが毎回同じところでつまずくとき、それは「まだその部分が整理できていませんよ〜」という、いわば心のSOSのようなものです。集中が切れるのも、話を聞かないのも、本質的には「理解できていないから」なんです。大人でも、何を言われているか分からない状態で話を聞き続けるのは、つらいですよね。子どもなら、なおさらです。

◆課題の「構造」を分解してみましょう

例として、こんな課題を想像してみてください。

8小節の曲、左右ともCポジション

  • 左手:全音符だが小節ごとに音が異なる

  • 右手:3度や4度の跳躍があるメロディ

一見シンプルに見えても、実は複合的な処理が求められる課題なんです。

  • 「右手の跳躍を目で先読みしないと弾けない」

  • 「左手もじっくり読まないと迷う」

  • 「両手で合わせるには相当集中力が要る」

これを「なんで弾けないの?」と責めるのは酷というもの。まずは“できる形”にアレンジしてあげましょう。

◆スモールステップの実践アイデア

✴ 4小節なら弾ける生徒さんには?

5〜8小節だけを繰り返し練習する
4小節に短くして繰り返し記号をつける(視覚的にも負担が減ります)

✴ 左手が追いつかない生徒さんには?

→ まず「右手が難しくて左手が止まる」のか、
→ 「左手の音が読めてない」のか、原因を見極めましょう。

必要ならば:

  • 左手を固定音にする

  • 読みやすい音域に変更する

  • 左手のリズムを変えて“遊び”にする

✴ 跳躍に苦戦している生徒さんには?

→ 3度だけの跳躍パターンに変えてみる
→ 休符を入れてタイミングに余裕をもたせる

◆大切なのは、「テキストを進めること」ではなく…

私が大事にしているのは、「生徒さんが“できた!”を実感すること」です。

進度を気にして焦っても、生徒さんの中には“何も積み上がっていない”こともあります。

一方で、小さな「できた」の積み重ねは、自己肯定感主体的な学びに直結します。

そのためにも、私はこう考えています。

 「私の想い」を伝えやすいテキスト、 「一人ひとりに合わせやすい教本」を選んでレッスンを組み立てています。

◆テキストを“工夫する余地”があるからこそ、先生の存在意義が生きる

「この通りにやれば大丈夫」という万能テキストは、残念ながら存在しません。だからこそ、私たち講師の役目は大きい。テキストを“工夫して活かす”ことで、その子のレッスンが、その子だけの物語になります。

そして何より――
生徒さん自身が「わかった!」「できた!」と感じる瞬間
これがレッスンの醍醐味であり、次の一歩を踏み出す力になるのです。

◆まとめ:進まなくてOK、でも止まりっぱなしにはしない

「進まないレッスン」は、決して悪いことではありません。でも、「進めないまま放置される」のは、生徒にとって大きなストレスです。

だからこそ、
“その子の今の地点”をしっかり観察し、小さなステップに分解して、必ずできる形にしてあげること。これが、生徒の未来につながる大きなレッスンになると信じています。

 

レッスンを動かすのは「先生のできた」より「生徒さん自身のできた」だと思っています。